魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~

 天吼の白獣は小さく首をかしげ、そして鼻先を近づけてきた。
 そのしぐさは、まるで「それはどんな意味なの?」と問いかけているようにも見える。
 金色の瞳がまっすぐにこちらを映す。

「……パッロ」

 リュミが名を呼ぶと、天吼の白獣はその名を確かめるように、静かにつぶやいた。

「気に入った」

 たった一言が、胸にやさしく響く。
 リュミは自然と、にっこりと笑っていた。
 胸があたたかくて、むずむずする。今までに感じたことのないこの気持ちに戸惑いながらも、心が弾む。

 この気持ちはなんていう名前なんだろう?
 わからないけれど、決して悪い気持ちじゃない。むしろ、ずっと抱きしめていたいような──そんな気持ち。

 自分のつけた名前が、相手の中で生きていく。
 それって、なんだかすてきなことだ。
 リュミはそっと目を細める。

「……パッロ、会いにきてくれてありがとう」

 パッロは喉の奥で小さく「グゥ」と鳴いたかと思うと、そっとリュミの肩に頬を寄せる。
 その動作は、まるで雪が音もなく積もるかのように静かで、けれどたしかなぬくもりがある。

(……この子は、リュミのおともだち。初めての、おともだち)

 不意に、胸の中にそんな想いがすとんと落ちてくる。
 それがスキルの力によるものなのか、ただの勘なのか、今のリュミにはわからない。
 けれど、パッロの存在は、たしかにリュミの支えになっていた。今、この瞬間にも。

「リュミ」
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