魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~
自分の名前を呼ばれたその瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられる。
やさしい声。やわらかくて、深くて──まるで心に直接触れてくるような響き。
パッロは鼻先をリュミの頬に寄せ、そっと触れた。
毛並みのやわらかさと、深い呼吸のぬくもりがじんわりと伝わってくる。
「……ありがとう」
まるで心に直接届くような声。
リュミは目を閉じ、胸の内で返す。
(リュミも……ありがとう)
声に出さなくても、きっと伝わっている。
パッロの尻尾が、ゆっくりと左右に揺れた。風に合わせて、やさしく舞うように。
「これからも、傍にいてもいいか」
問いかけるその声には、どこかおそるおそるとした気配があった。
拒まれることを怖れているのだろうか。
でも、リュミにはその気持ちが痛いほどわかる。
「もちろん。リュミも……パッロといっしょがいい」
その言葉に、パッロは大きく息を吐いた。
肩の力が抜けたように、全身の毛並みがふわりと揺れる。
そのときだった。
背後から、足音が近づく。ぶつぶつとつぶやく、あやしげな声も。
パッロの耳がぴくりと動き、瞳の奥にわずかな警戒の光が宿る。
すっかり忘れていたけれど、今この場にいるのは、リュミとパッロだけではなかったのだった。