百花繚乱
「思い返してみれば、自分の気持ちを、一方的に押し付けるだけで、あなたの気持ちを、考えることはしなかった……」

倫太郎様は、私の前に来ると、両手をついて頭を下げた。


「私を、許して下さい。」

「倫太郎様……」

私は慌てて、側に近づいた。

「頭を上げて下さい。この家を継ぐ人が、使用人へ頭を下げてはいけませんよ。」

私がそう言っても、倫太郎様は、顔を上げては下さいませんでした。

「これは使用人にとしての深雪にではなく、僕の初恋だったあなたに言わせて下さい。」

「倫太郎様?」

「もう二度と……あんな事はしません。ですから……」

倫太郎様の身体が、小刻みに震えているのが分かりました。

「紳太郎の為にも……この家から、離れないで下さい。」

自分の事よりも、大切な人の事を先に考える。

倫太郎様はそういう方でした。

「はい…」

私の返事にやっと、倫太郎様は顔を上げてくれました。

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