百花繚乱
それでも時々、紳太郎様は私の家に来て下さって、二人でお酒を酌み交わす事もありましてね。

その時だけは、癒されるというか、苦労の全てを忘れることができたんです。


「いつも家を訪ねて悪いね、深雪。」

「いいえ。お気になさいますな。」

いつもそう言っては、ほら隣の部屋にある、洋風の椅子に座って、二人で飲んでいたんですよ。

そんな時決まって、紳太郎様がお話するのは、奥様の詩野様の事でした。

「こうしている時も、せっかくのお二人の時間を、お邪魔してしまいましたね。」

私がそう言うと、紳太郎様は私の言葉を、笑い飛ばしていました。

「家にいる時は、いつも詩野と二人きりだよ。」

「まあ、ご馳走様です。」

私なんかは邪魔なんかにもならないほど、お二人の仲は良かったんですね。


「兄貴は元気か?」

「ええ。気になさるなら、本家の方にも、顔をお出しになればよろしいのに。」

「一旦家を出ると、なかなか行きづらいものがあってね。」

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