百花繚乱
相手の方は怒って立ち上がった。

「ちょっと心臓の音を聞いただけで、女のおまえに何が分かるんだ!」

その人は突然、私の聴診器を奪うと、私の肩を掴む。

「今度はおまえの番だぞ。」

そう言って、私の首元に手をかけた。

もしかして、裸を診られる!

「いやっ……」

「もうそれくらいにしておけ。」

その時、相手を止めて下さったのは、紳太郎さんだった。


「気は済んだろう?」

相手の方は舌を鳴らすと、私たちから離れて行った。

「そうだ。」

紳太郎さんは、思い出したかのように、付け加えた。

「せっかく、瀬戸先生に診てもらったんだ。詳しい検査をしてもらった方がいいぞ。」

悔しそうな顔をしている、相手の方の表情を見て、私達は隠れて笑っていた。


「ところで、よく気がつきましたね。」

紳太郎さんは、まるで全てを知っているかのように、そう言った。

「あいつは、一度うちの病院に来て、父さんに診てもらった事があるんだ。」

< 43 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop