急行列車が過ぎた後で
かのん「とは言っても、私も高校が違うから詳しくは知らないんだけどね。佑は、まあアホだったけど高校には通ってたよ。私、佑の実家とけっこう近いから、いろいろ噂話とか耳に入ってきたんだけど、高校の頃はあんまりいい話は聞かなかったなぁ。さすがに警察沙汰はなかったけど、女の子の問題とか、つるんでる友達がやばいとか…」

友2「へぇ。あの佑くんがねぇ…」

一人の友達が、私の方を見てニヤニヤしている。

智花「な…なに…?」

友1「えーっとね、小学4年の頃だっけ?『智花のことが好き』って佑くんが、休み時間にクラスのど真ん中で公開告白したの」

智花「な、何年前の話してるの!?」

友1「智花も佑くんが好きでさ、両想いだってことがクラス中に広まって、その日の休み時間はずっと手拍子付きの『ラーブラブ!』コールだったよね」

智花「その話するのやめてくれない!?もう軽いトラウマなんだから…」

かのん「あんなに純粋だった佑くんがねぇ…女の子問題とはねぇ…」

私の制止は友達に完全にスルーされてしまったけれど、あの日のことはよく覚えている。

耳を塞いでも、冷やかす声は消えなかった。
恥ずかしくて、恥ずかしくて、その場から消えてしまいたかった。
「やめて」と叫んでも、私の声は誰にも届かず、
男子も女子も面白がって、コールをやめようとしなかった。

最終的に、私が泣き崩れて。
「誰が悪い」「誰が泣かせた」と責任の押し付け合いになったところで、先生が仲介に入ってようやく終わった。
実は、その一件があってから、私と佑は以前ほど関わらなくなっていった。
それでも私は、結局小学校を卒業するまで佑のことが好きだったんだ。
どこが好きだったかなんてもう忘れちゃったけど、
ずっと、ずっと、佑のことを想っていた。

…そういえばあの時、佑は何を思っていたんだろう。

かのん「で、どこまで話したっけ?」

友2「佑くんの高校時代の話?」
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