急行列車が過ぎた後で
初恋の人との再会
智花「……なんで佑がここに……」
佑「なんでって……さっきも言った。智花が『死ぬかもしれないから来てほしい』とかいうから来たんだよ」
私が知っている佑ではない、すっかり大人になった佑が今、目の前にいる。久しぶりに会った初恋の人。目が合ったが、思わず逸らしてしまった。
再び、氷が溶けてカランとグラスが音を立てる。
……ちょっと待って? え、なに? 私、そんなヤンデレみたいな発言したわけ?
しかも十年近く会ってない人に対して?
ていうか何この状況? なんで二人っきりなの?
智花「……かのんと尚人くんは? あと、ここどこの居酒屋?」
どういう経緯でこんなことになっているのか思い出そうとしたが、全く記憶がない。飲みすぎのせいか、まだ若干頭がふわふわする。
佑「まあ、あれだけ酔っていればな。店員さん、すみません。追加のお水いただけますか?」
佑が頼むと、店員さんはすぐに水を持ってきてくれた。智花はありがたく受け取り、水を口にする。グラスを置いて、思わず額を押さえた。
智花「……本当に思い出せない」
佑「酒、そんなに強くないんだな。かのんと尚人とも、そこまで飲んでなかったように見えたけど」
そう言って佑は自分のグラスに口を付けた。
色は透明だ。日本酒か何かだろうか。
私は日本酒が飲めない。佑が言った通り、アルコール自体そんなに強くないからだ。
なのに今日は調子に乗って飲んでしまったらしい。
どうしてこんなことになっているのか、私は必死に振り返る。
智花「……今日は確か……」