さっちゃんの足跡

9. 国語の時間。

 今日から新学期。 授業がいよいよ始まります。
最初は国語の時間ですね。
 さっちゃんにも教科書とかいろんな道具が配られました。
でもでも触ってみたって何も分かりません。 何なんでしょう?
 そこで担任の谷山京子先生が一つずつ教えてくれることになりました。

 「いいですか。 これが教科書です。 まだまだ点字を覚えてないからさっぱり分からないと思うんだけど、少しずつ覚えていきましょう。」
「そしてこれが点字盤。 これが点筆。 点字を書くための道具です。 そしてこれが点字用紙。 点字を書く紙です。」
 そう、見えない子たちは点字盤に点字用紙をセットして点筆で点字を書くわけです。
六つの点を組み合わせて〈あ〉から〉びょ〉はもちろん、アルファベットも数字も音符も化学記号も書いてしまいます。
少し前なら点漢字なんて言って六つの点で漢字まで表してたんですよ。 本当に勉強したらそこまでやれたんです。
今はワードも発達したからそこまでやらなくなりましたけど、、、。
 さあさあ、さっちゃんも点字に挑戦します。 点字盤に点字用紙をセット、、、。
右端を点字盤に沿って折りまして、引っ繰り返して折り目が右側に来るようにセットします。
そこに点字を打つための枡がいっぱい付いた定木を当てます。 1行は32枡。
その枡に点筆を差し込んで一つずつ点を選びながら打っていくわけです。 でも書く方向と読む方向は真逆なんですよ。
 右から左に向かって書いていくのに左から右へ読んでいくんです。 慣れるまでは大変。
あいうえおだけでも、覚えるのは大変です。 初めてのことだからね。
 この先、数字やらアルファベットやら音符やら出てくるのに覚えられるのかなあ?
ママはさっちゃんが居ない居間でテレビを見ながらぼんやりと考え事をしています。
考えても仕方ないことだってたくさん有ることは分かってるんですけど、、、。
それでもやっぱり不安になったりします。 さっきまでここに居たさっちゃんが居ないのだから。
頑張ってるよね? 負けたりしないもんね。
何度も自分に声を掛けます。 そしてやっと立ち上がりました。
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