あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
 その時、ガチャリと扉の開く音がして、菜月ははっと我に返るように顔を上げる。

「アヤセサン、チョットイイデスカ?」

 そう言いながら部屋に入って来たのは、アメリカ支社から研修で来ているデイヴィッドだ。

 彼はここ最近、システムのことで、度々菜月の元に相談に来ている。

 どうもアメリカ支社のシステムと、国内のシステムの仕様に違いがあることが一因のようだが、菜月は国内のシステムにしか知識がなく対応に困っていた。

『デイヴィッドの要望は適当に流して大丈夫ですよ。どうせすぐに帰るんだし』

 笠井はそう言って、デイヴィッドが来るとそそくさと部屋を出ていくこともある。

 今日も笠井はデイヴィッドの姿を見た途端、顔を歪めて作業台から立ち上がり、サッと部屋を出て行ってしまった。


 菜月は軽くため息をつきながら笠井の背中を見送ると、側に寄ってきたデイヴィッドに顔を向ける。

 デイヴィッドは手に持っていた資料を菜月のデスクに置いた。

「システムノ、ココヲクリック。ニューページヒラク。ナンセンス」

 菜月は小さくうなずくと、該当の箇所をデスクのパソコンで開く。

 どうもデイヴィッドは、マーケット分析のためのデータ抽出をする際に、別ウィンドウが開くことが不便だと言っているようだ。
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