あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
(あぁ、そうか……)

 菜月は心の中でそうつぶやくと、やっと自分の気持ちに目を向ける。

(私は再会した凌平に惹かれたんじゃない。もうずっと、高校生の時から、凌平に惹かれ続けてるんだ……)


 大学に入学して新しい生活が始まっても、誰一人菜月の心をときめかせる男性は現れなかった。

 そして菜月自身も、次第に恋愛ごとを避けるようになっていた。

 それは社会人になってからも同じで、今では“仕事が恋人”などと言うほどになっていたのだ。


(結局、私はずっと凌平の事が好きだったんだ……)

 ようやくそのことに気がついた菜月は、潤んだ瞳で凌平を見上げる。

 そんな菜月の顔を見て、凌平はそっと口元を引き上げた。


「なぁ、今度の休み、一緒に地元へ帰らないか?」

「え……」

 凌平の言葉に、思わず菜月の視線が泳ぐ。

 菜月の脳裏に、卒業以来連絡すら取ってない萌絵の顔が映った。


「菜月」

 凌平が再び優しい声で名前を呼び、温かい手を菜月の頭に乗せた。

「二人であの町に帰ろう。そうすればきっと、俺たちはこの先に進める」

 逃げるだけでは前に進めないことを、凌平はちゃんと知っている。

(私は、前に進みたい)

 菜月は真っすぐに凌平の瞳を見つめると、こくんとうなずき返したのだ。
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