あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
 あの頃、菜月と凌平、萌絵の三人はいつも一緒だった。

 学校帰りにはよく遊んだし、誰かが委員会などで遅くなっても、自然と皆が待っているような関係だった。


(よく凌平の自転車の後ろにも乗ったなぁ。パトカーが来ると慌てて飛び降りたりして……)

 菜月は、ギコギコと音を立てる凌平のシルバーの自転車を思い出して、くすりと肩を揺らす。

 バス通学だった菜月に対して、凌平と萌絵は自転車通学組で、よく菜月がバスに乗り遅れると二人が途中まで送ってくれた。


「ここ、覚えてるか?」

 大きな橋にさしかかった時、凌平が足を止める。

「あぁ! 二人乗りしてる時、凌平の自転車が急にパンクして、転びそうになったとこだよね」

 菜月が声を上げると、凌平は嬉しそうにうなずいた。

「あの時は正直焦ったな」

「本当に! 二人で川に落ちるかもって、一瞬覚悟したもん」

 くすくすと笑い声を立てた菜月は、橋の欄干に手をのせると、そっと身を乗り出す。

 流れる川面に菜月と凌平の影が映り、ゆらゆらと揺れていた。
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