あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
『私ね、今から凌平くんに告白するの! 菜月ちゃんも一緒に来て!』

 あの日の萌絵の声が、頭の中でこだまする。


 高校三年生のあの日、萌絵は嫌がる菜月を連れて、教室で待っている凌平の元へと駆けて行った。

「ねぇ、萌絵。私は外で待ってるよ……。二人だって気になるでしょう?」

 菜月は何度もそう言ったが、萌絵は菜月の手を決して離してくれなかった。

 そして、気まずそうにうつむく菜月の前で、萌絵は凌平に告白した。


 その時、凌平がどんな顔をしていたのか、下を向いていた菜月は知らない。

 でも菜月の耳に響いた声は「ごめん。友達としてしか、見れないから」という凌平の答えだった。

 凌平の声にはっと顔を上げた菜月は、自分を見つめる凌平と目が合ったのを覚えている。

 でもその時、見つめ合う菜月と凌平の横で、萌絵がやけに落ち着いた声を出したのだ。


「そっか。じゃあ私は、菜月ちゃんと一緒だね」と。


 菜月は橋の欄干に掛けた手を、ぎゅっと握り締める。
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