あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
 あの日、萌絵の告白を聞いて、菜月は自分が凌平を好きだったのだと自覚した。

 そしてそれと同時に、自分は凌平への気持ちを隠さなければいけないと思った。

 きっと凌平は、菜月のことも友達としてしか見ていない。

 だからこそ、自分の気持ちを隠すことが、高校生活を共にしてきた凌平と萌絵という、二人の親友を大切にする方法だと思ったのだ。

(でも結局、私はその二人すら失った……)

 その日以降、凌平にも萌絵にも普通に接することができなくなった菜月は、二人との距離が開いたまま高校を卒業した。


「綾瀬?」

 ふいに凌平が顔を覗き込む。

「ご、ごめん。ちょっと昔のこと、思い出してた」

 菜月は慌てて風に揺れる髪を耳にかけると、ふと橋の奥へ目をやった。

 橋の反対側からは、小さな女の子と手を繋ぎながら、こちらへと向かって来る、女性の姿が見える。

 女の子と歌を歌いながら、楽しそうに歩く女性の姿をぼんやりと見ていた菜月は、次第にはっきりとしてくる女性の顔に、はっと息を止めた。
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