あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
「……萌絵?」

 ふいに菜月の口から声が漏れる。

「ど、どうして、萌絵が……?」

 動揺する菜月が振り返ると、凌平は静かにうなずいている。

 大人になった萌絵は、菜月の前まで来ると、にっこりとほほ笑んだ。


「菜月ちゃん、久しぶり。凌平くんがね、今日菜月ちゃんを連れてくるからって、教えてくれたんだ」

「凌平が……?」

 萌絵の言葉に、菜月は再びパッと凌平を見上げる。

 凌平はそんな事、一言も言っていなかった。

 今も凌平は、菜月の隣で静かに口元を引き上げるだけだ。

 すると萌絵が、戸惑う菜月の前に一歩足を出す。


「私ね、菜月ちゃんに謝らなきゃいけないことがあるの」

「謝る……?」

「そう。今日はどうしても、それを伝えたくて来たんだ」

 萌絵はそう言うと「ちょっと歩こう」とくるりと背中を向けた。

 菜月はまだ動揺したまま、隣の凌平の顔を見上げる。

 凌平は優しくほほ笑むと、わずかに震える菜月の肩にそっと手をかけた。

 菜月は一旦大きく息を吐くと、萌絵の背中を追って歩き出した。
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