あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
 まさか凌平が、そんなに前から菜月に好意を寄せていたなんて、微塵も思ってもみなかった。

 知らなかったのは菜月だけだったのか。

 凌平は愕然とする菜月にくすりと笑うと、抱きしめる力を弱め、そっと菜月の顔を覗き込んだ。


「綾瀬が俺を避けるようになって、正直参ったよ。あの頃の俺には、どうしたら関係を修復できるのかなんてわからなかった……」

 凌平はそう言うと、小さく視線を落とす。

「大学に入ってからも、綾瀬がどこにいるのか探した。綾瀬を忘れようと、他の人と付き合ったこともある。でも結局ダメだった。社会人になってからは、だったらいっそのこと、仕事に生きればいいって思った」

 凌平の言葉に菜月は小さく目を開く。

(あぁ、凌平も、私と一緒だったんだ……)

 菜月は次第に瞳を潤ませると、凌平のシャツをキュッと握り締めた。


「私たち、どれだけ拗らせてたんだろうね」

「……本当だな」

 すると凌平が、菜月の両肩をそっと支えながら正面に向き直る。
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