あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと

エピローグ

「綾瀬さん、ここのシステムの仕様なんですけど」

 笠井の声に、菜月はパソコン画面から顔を上げた。

「はい。一応、社にも確認してみて、こういった修正はどうかと思うんですが」

 菜月はディスプレイを指さしながら説明すると、プログラム画面を操作していく。

 今日もオフィスには菜月の澄んだ声が響いていた。


 晴れて凌平と恋人同士となり、萌絵とも再び友達として連絡を取るようになった菜月は、新しい生活を刻み始めている。

 あの日以来、凌平とは、お互いが離れていた時間を埋めるように、二人で大切に日々を過ごしていた。

 好きな人と過ごす一日一日が、こんなにも愛しいものなのかと思うほど、菜月は幸せに満たされている。


「では、それでお願いします」

 定時も過ぎ、打ち合わせを終えた菜月は、自分のデスクに戻るとチラッと横に目をやる。

 すると、同時にこちらに目を向けた凌平とパッと目が合った。

 菜月はドキリとするが、凌平は軽く眉を引き上げると、小さく目を細めている。

 その顔つきに、菜月はくすりとほほ笑むと、退社するためにパソコンをシャットダウンした。


「あれ? 綾瀬さん、今日はもう帰り?」

 向かいの席から、宮本が首を傾げながら顔を覗かせる。

「はい。今日はお先に失礼します」

 菜月はにっこりとほほ笑むと、鞄を肩にかけながら立ち上がった。
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