陽だまりのエール
一度気分転換しようと、俺は医局を出て外来棟にある売店に向かった。
夕方のこの時間、外来受付はすでに終了しているが、まだ会計待ちの患者の姿が多い。
それを横目に歩いていくと、救急の待合ロビーのソファに座る女性の姿が目に入った。
ちょうど紬と同じくらいの年恰好だ。
搬送された患者の付き添いなのか、看護師に話を聞かれている。
何気なく通り過ぎようとして、彼女の傍らにある封筒に目が留まった。
そこに書かれていたのが、紬が務める会社の名前だったからだ。
「……?」
なにか気になって、足を止める。
一度やり過ごそうとしたものの、封筒の横に置かれていたバッグを見て、思わず息をのむ。
紬が持っているものと、よく似ている……。
「同僚なんです。一緒に外出中、フラッと倒れてしまって……」
聞き拾った断片的な情報に胸騒ぎがして、俺は女性に近寄っていった。
「あの……失礼ですが」
「あ、塩入先生」
声をかけた俺に反応したのは、もちろん看護師の方だ。
女性の方は、ぼんやりと俺を見上げている。
「患者さん……あなたの同僚の名前は?」
得体の知れない焦燥感から、勢いのまま訊ねると、看護師が自分の手元のメモに目を走らせた。
「ええと……仙崎紬さん、二十九歳の女性ですね」
そこに書かれた名前を読み上げながら、同意を求めるように女性に視線を投げる。
「はい……」
女性がやや困惑気味に頷くのを見て、一瞬、血の気が引く思いがした。
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