御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「……涼花さんは、律さんのことをどう思っているんですか?」

彼女の手が止まり、カップがテーブルに戻された。

一瞬だけ、表情が揺れた。

「……愛してました。」

過去形で彼女は告げた。

「律は、私にすべてを懸けてくれました。でも私は──応えられなかった。家の都合に縛られたくなかったし、あの頃の私は、自分の人生を優先したかった。」

ゆっくりと彼女は視線を落とす。

「でも、いざ彼が他の誰かと結婚したと聞いたとき、自分でも驚くほど心が波立ったんです。……愛していたんだなって、気づきました。」

そして、まっすぐ私を見る。

「彼は、私を全力で愛してくれた唯一の人です。」

私は唇を結んだ。彼女の言葉は、痛いほどよく分かる。でも──

「律さんは、今は私を見てくれています。」

涼花さんの眉がかすかに動く。

「彼が選んだのは、私なんです。」

沈黙の中に、カップの中で揺れるコーヒーの波紋だけが広がっていた。
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