御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
だが律さんは躊躇なく、玄関をくぐると、まっすぐにリビングへ向かう。

私は黙ってその後に続いた。

リビングに入り、律さんは低く、しかし怒りを抑えた声で言った。

「……どういうことだ。」

「何が?」

すっと涼花さんが紅茶を口に運ぶ。

その余裕の仕草が、逆にぞっとする。

「母さんに言ったんだろ。“俺が千尋と別れる”って。」

涼花さんはふっと目を伏せ、そして口角をわずかに上げた。

「……ええ。言いましたけど?」

その場の空気が張り詰めた。

「どうしてそんな嘘を?」私が震える声で問う。

「嘘? いえ、そう“なると思っていた”だけです。」

律さんが一歩、彼女に近づく。

「いい加減にしてくれ。俺はお前と結婚する気も、再会する気もなかった。全部、終わったことだ。」

涼花さんは、紅茶のカップをテーブルに置き、ゆっくりと立ち上がる。

「終わったこと……ね。じゃあ、なぜあの日、私に“全力で愛した”なんて言ったの?」
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