御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「それでも、私は悠太を選びたかった。」

声が震えそうになるのを必死に堪えた。

「仕事も順調だったし、親ともやっと向き合おうとしてた。結婚を考え始めたからこそ、家族を大事にしようと思っていた。その時に、あなたが“来て”って言ってくれたら――私はきっと、全部を捨てても、あなたを選んだと思う。」

悠太は言葉を失っていた。

「悩んだと思う。でも、その先にあなたがいてくれるって信じてたから、私は選びたかったの。」

目を合わせた。
もう何も言わない彼の瞳に、今さらの後悔の色が浮かんでいた。

「“言わなかった”ことが優しさだとしても、私は、あの時言ってほしかった。」

言ってほしかった。

あなただけを見て、飛び込んでほしかった。

それだけが、心にずっと残っていた。

家に帰ると、キッチンからいい香りが漂ってきた。

そっと覗くと、エプロン姿の律さんがフライパンを振っていた。
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