御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
首を横に振るのが、やっとだった。

「……私たち、結婚生活、うまくいってるの。」

それは強がりじゃない。

ちゃんと向き合いたい。

律さんが涼花さんと向き合ってくれたように、私も悠太と。

だけど──。

「嘘の結婚生活を、いつまで続けるんだ。」

ズキッ。
胸が痛む。
まるで、ずっと隠していた弱さを見透かされたように。

「嘘じゃない。」

震える声で、必死に言い返した。

「そう思いたいだけだよ、千尋。」

悠太の言葉が、刃のように突き刺さる。

本当に、私は“そう思いたいだけ”なの……?

「この前、俺がロンドンに行くのを──どうして言ってくれなかったのかって、言ったよな。」

「うん……」

悠太の手が、私の手をぎゅっと包む。

その熱に、過去の記憶がじわじわと蘇ってくる。

「選ばせてほしかったって、言ってた。」

「……うん。」

そう。私はあのとき、選びたかった。

この人を、愛していた。だからこそ、最後まで望みを捨てなかった。
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