御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「今度こそ選ばせる。千尋、俺と……一緒の人生を。」

そう言って、悠太の顔がゆっくりと近づいてきた。

唇が触れる、寸前。

その時だった――。

「そこまでだ。」

冷静で、低く、けれど怒りのこもった声が、私たちの間に割って入った。

驚いて顔を上げると、そこには――律さんが立っていた。

スーツのネクタイを緩めたまま、鋭い視線で悠太を睨んでいる。

そして彼の手が、私と悠太の間に差し込まれていた。

その手は、迷いなく私の肩を抱き寄せる。

「……律さん。」

「悪いけど、俺の妻に勝手に触れないでくれる?」

その一言に、場の空気が凍った。

すると悠太が立ち上がる。

「神楽木さんですね。千尋の旦那さん。」

「君は?」

律さんは落ち着いた口調のまま、悠太を見据える。

「秋山悠太と言います。千尋の――別れた恋人です。」

その言葉に、空気がぴりつく。

律さんが一歩前に出た。
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