御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
悠太は、ついに言葉を失った。

千尋は、二人の間で立ち尽くしていた。

心が千々に乱れる。

「もう止めて。」

私は、二人の間に割って入った。胸が苦しい。どちらも私のために言い合っている。それは分かっているのに、痛かった。

「律さん、帰りましょう。」

迷いのない声で言っていたけれど、きっと私の瞳は揺れていた。

お会計のバインダーに手を伸ばす。だけど――

「千尋。」

悠太がそれを奪い取った。彼の手は、震えていた。

「また迎えに行く。……絶対に。」

私は、律さんの腕を掴んで振り切るように店を出た。

夜風が冷たい。けれど、律さんの腕の温もりが心地よかった。

ふと、私は聞いてしまった。

「ところで、律さん。どうしてここに?」

「……ああ、たまたまなんだ。取引先との会食が、この店であって。」

「え……仕事だったの?」

しまった、と思った。私、仕事中の律さんに――
< 159 / 252 >

この作品をシェア

pagetop