御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「邪魔、しちゃったね……ごめん。」

うつむいた私の頭を、律さんがポンと撫でた。

「邪魔なわけないだろ。」

その声は、いつもより少し低くて、優しくて、胸に染み込んでいく。

「仕事より大事なものが、目の前にいたんだから。」

私は目を見開く。

「俺、結婚したらさ、周囲にも《この人は俺のモノだ》って、堂々と知らしめるもんだと思ってた。」

夜風の吹く帰り道。

ビルの灯りが遠ざかると、私たちは自然と歩みを緩めた。

「でも……そうじゃないんだなって思った。」

律さんはポケットに手を入れながら、小さく息を吐いた。

「結婚しても、千尋は“俺の所有物”じゃない。当たり前のことなのに、ようやく分かった気がする。」

私は歩くのをやめて、律さんの顔を見上げた。

「私は、律さんのモノだよ?」

そう言って、彼の腕にそっと手を添える。

律さんは驚いたように目を瞬かせ、そして小さく笑った。

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