御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
──こういうところなんだ。

誰にも媚びない。けれど、誰かを守る強さがある。

御曹司という立場に甘えず、実力で“部長”に就いている理由が、ほんの少しだけわかった気がした。

一言も声を上げず、何も言わないその仕草に、

私はまた、心を静かにかき乱されていた。

ふと、視線を感じて顔を上げると、神楽木さんと目が合った。

その瞳は、まっすぐで真剣で──でも、どこか優しさを含んでいた。

まるで、そっと見守ってくれるような、そんな眼差し。

心臓が、また跳ねた。

こんな人だったら、もしかして……

結婚しても、いいのかもしれない──

……って、私はなにを考えてるの?

我に返って、ぐっと目を伏せた。

相手は、神楽木律。

一流企業の御曹司で、会社の部長。

私とは住む世界が違う。

たまたま今、偶然仕事で関わっただけで、私なんかが結婚の対象になるなんて、あるわけない。
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