御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
そして、20時を過ぎても──律さんは来なかった。

予約していたレストランの扉を開けて、私はそっと頭を下げる。

「申し訳ありません。キャンセルでお願いします。」

店員さんは少し困ったように微笑んだ。

「またのご来店をお待ちしております。」

私は曖昧に頷き、レストランを出た。

夜風が、涙で火照った頬を撫でていく。

ヒールの音を響かせて、交差点へと歩く──そのときだった。

向かいの歩道、信号が赤から青に変わるのと同時に、誰かが全力で駆けてきた。

「千尋!」

その声を聞いた瞬間、胸がきゅっと痛んだ。

律さんだった。乱れた髪に、ネクタイは緩み、額には汗が光っている。肩で大きく息をしていた。

「ごめん、千尋。遅くなって……!」

彼は荒く息を吐きながら、私の目の前に立った。

でも、私の心はもう、静かに壊れていた。

「……誕生日の夜に、一人でレストランで2時間待ったのよ。」
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