御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
小さくつぶやいて、スマホを見つめる。

LINEには既読も返信もない。

電話も、コールは鳴るけれど出てくれない。

「きっと、もうすぐ来るはず。」

そう自分に言い聞かせながら、冷たい風に当たる肩をさすった。

すると、ドアが開いてレストランのスタッフが声をかけてくる。

「お客様。神楽木様でいらっしゃいますか?」

「はい……」

「ご予約の時間を少し過ぎておりますが、いかがなさいますか?」

「……中で待ちます。すみません。」

私はぎこちなく笑い、案内されたテーブルについた。

美しくセットされたカトラリーに、薄暗い灯り。

目の前の空席が、やけに広く感じる。

スマホを取り出し、震える指でメッセージを打った。

《今、お店の中で待ってるね。無理なら連絡して》

けれど、返信は来なかった。

水だけが、静かにテーブルに注がれていく。

誕生日に響くのは、ワインの栓を抜く音でも、祝いの言葉でもなく、時計の針の音だけだった。
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