御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
翌日、私はスーツケースに数日分の洋服と下着を詰めて、実家の玄関をくぐった。

「ただいま……」

リビングのソファに座っていた母が、テレビから顔を上げた。

「まあ、何? スーツケースまで持って。喧嘩でもしたの?」

その口ぶりは、まるで“ちょっとしたケンカも恋のスパイス”とでも言いたげで、少しだけ楽しんでいるようにも見えた。

「うん、そんなとこ……」

私はスリッパを履いたまま、ふぅと息を吐いてリビングに腰を下ろす。

母は心配そうというより、好奇心いっぱいの顔をしていた。

だが──その奥から聞こえてきた、新聞を叩きつけるような音。

「だから言ったんだ。交際0日婚なんて、うまくいくわけがないだろう!」

お父さんの声だった。

ソファから立ち上がった父は、眼鏡を押し上げながら私を睨む。

「俺は最初から反対だった。いくら相手が大企業の御曹司でも、結婚ってのは“人間関係”だ。恋愛もろくにしてないで結婚して、何が分かるってんだ」

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