御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
言葉の一つひとつが胸に突き刺さる。

でも、私だって分かってる。分かってた。

それでも、律さんを信じて飛び込んだのだ。

「……分かってる。でも、どうしても今日だけは、家にいたくなかったの。」

私の声が震えていた。悔しさと、寂しさと、情けなさが入り混じる。

母がそっと近づいて、私の手を取る。

「ごはん食べてないんでしょう? 温かいの作るわ。お風呂もすぐ沸かすから、ゆっくりしていきなさい。」

その優しさが、涙腺を刺激した。

「ありがとう……」

私の視界が、滲んで見えなくなった。

ビールを片手に、テレビをぼんやりと眺める。けれど、内容は何も頭に入ってこなかった。

──律さん、今頃どうしてるんだろう。

ふと、あの必死な顔が浮かぶ。

遅れてきたくせに、はぁはぁと息を切らしながら、私の名前を呼んだ人。

でも……あの夜、一人で待ち続けた2時間が、あまりにも長くて、寒くて、寂しかった。
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