御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
スタッフの案内でレストランへ向かうと、奥の窓際の席に通された。

そこには、可愛らしくデコレーションされた小さなケーキがひとつ。

「……律さん。」

私の名前がチョコレートプレートに書かれている。

誕生日のロウソクが、静かにその灯を揺らしていた。

「千尋が生まれてきてくれた日を、ちゃんと祝いたかった。」

律さんの言葉に、胸がいっぱいになる。

遅れてやってきた誕生日。

でも、こんなにも心に残る夜が、他にあっただろうか。

私は黙って、律さんの手を握った。

「律さん、ありがとう。」

震える声でそう伝えた瞬間、胸の中に溜めていたわだかまりが、するするとほどけていった。

あんなに意地を張っていた自分が、急にちっぽけで、愛しくすら思える。

「こちらこそ。千尋が産まれてきてくれて……俺と出会ってくれて、本当にありがとう。」

そう言ってくれた律さんの瞳には、迷いなんて一つもなかった。
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