御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
車は街の灯を抜け、高級ホテルのロータリーへと滑り込む。

「えっ……ここ?」

思わず声が漏れた。

「誕生日のやり直ししたいって言ったでしょ。」

律さんは当然のように答えると、助手席のドアを開けてくれた。

戸惑いつつも降りると、すぐに手を取られる。

そしてそのまま、彼の温かい手に導かれて、私はホテルのエントランスへと歩き出した。

ロビーに入ると、制服を着たスタッフがすぐに近づいてきた。

「すみません、さっき電話した者ですが。」

その声にスタッフがぴたりと立ち止まり、ぺこりと深く頭を下げた。

「これはこれは……御曹司。お待ちしておりました。」

その一言で、すべてがつながった。

「……神楽木の系列?」

「じゃなかったら、当日に予約取れないだろ?」

律さんが少し得意げに肩をすくめる。

私は嬉しくて、でも同時にちょっと照れくさくて、口元を手で覆った。

──こんな風に、あらためて誕生日を用意してくれるなんて。
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