御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
──律さん、お願いだから、もう少しセーブして。

でないと私、本当にダメになっちゃう。

「もしかして……旦那さんと、あまり上手くいってないとか?」

滝君が、ちょっと気を遣うような声で聞いてきた。

「むしろ逆。」

私は間髪入れずに答えた。

そして、ふわりと笑う。

「律さんと離れていても……律さんが側にいるみたいなの。」

「どひゃー!」

滝君が大げさに叫んだ。

椅子の背もたれに仰け反って、目を丸くする。

「朝倉さんをそこまで骨抜きにした旦那さん、一度見てみたいですねえ。」

私は目をぱちくりと瞬いた。

そして、ふと思い出す。

「だったら……見てるよ。」

「えっ? いつですか?」

「この前、エスカレーターですれ違った時があったでしょ?」

「……ああっ!」

滝君がガバッと立ち上がる。

「もしかして──あのイケメン⁉ あの、すっごいオーラ出してた人⁉」
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