御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「仕事の打ち上げ、ということで。それとも──“結婚を前提とした初めてのデート”とでも言いましょうか?」

その顔には、あの“にやり”とした笑みが戻っていた。

冗談なのか、本気なのか──わからない。

だけど、確かに心が揺れた。

仕事が終わったあと、私は神楽木フォールディングスのビル前に立っていた。

高層ビルを見上げながら、心臓が高鳴るのを感じていた。

──本当に、来てしまった。

「朝倉さん。」

名前を呼ばれて振り向くと、神楽木さんが既にそこに立っていた。

「すみません、遅れてしまって……」

「いえ、俺も今来たところですよ。」

相変わらずのスマートな笑顔。

それだけで、胸の奥がざわめく。

「行きましょうか。」

神楽木さんがそっと私の背中に手を添える。

自然で、でもあたたかくて──少しだけ、くすぐったい。

「はい……」

ついてきてしまった、この人に。

でも、一度も向き合わずに断るなんて、もっと失礼だと思った。
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