御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
こんな場所に、自分が座っていることが不思議で──けれど、居心地が悪くはなかった。

食事を楽しんでいたその時だった。

神楽木さんが、私の斜め横に腰をずらす。

「……?」

目を向けると、彼の手にはひとつの箱があった。

それは、深い青のベルベットに包まれた、小さな四角い箱。

「改めて、僕の妻になってください。」

そう言って開かれた箱の中には、きらりと光を放つ指輪が──。

「……っ!」

思わず言葉を失った。

この数日で用意できるようなものじゃない。

明らかに、ずっと前から“この日のために”用意されていた指輪だった。

「あの……」

言葉にならないまま、彼を見つめると、神楽木さんは小さく微笑んだ。

「ごめん。……でも、千尋に会えるとわかった時から、我慢できなかった。」

そっと、私の左手を取る。

指先がふるえた。

「こうして隣に座って、ちゃんと渡したいと思っていた。これは、僕の決意です。」
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