御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
──この人は、本気なんだ。

まだ“好き”とも言っていない私に、

彼は“妻になって”と願っている。

ただのプロポーズじゃない。

これ以上なく真剣で、重くて、……温かい想いだった。

私は一つだけ、条件を出した。

──両親への挨拶。

どんなに素敵な人でも、どれだけ心が揺れていても、家族に紹介せずに結婚はできない。

それだけは譲れなかった。

「初めまして。神楽木律と申します。」

深く頭を下げる律さんに、父はきょとんとした表情を浮かべた。

「え?律さん……って、彼氏と別れたんじゃなかったか?」

父の問いに、私はうなずいた。

「うん。別れたの。……これは、新しい人。」

「ええっ⁉」

母の声が裏返る。

その様子に律さんは、落ち着いた口調で続けた。

「突然のご挨拶、大変失礼いたします。ですが──千尋さんとの結婚を、どうかお許し頂きたく、参りました。」
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