御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
そう、当然だ。お父さんの言っていることは、何も間違っていない。

だけど──

「正直に申し上げますと、本日中にでも入籍を希望しております。」

律さんは、落ち着いた声でそう言った。

一瞬、部屋の空気が凍る。

「……なんでそんなに急ぐ?」

父の声が少しだけ震えていた。明らかに動揺している。けれど、それを悟られまいと努めている。

律さんは静かに立ち上がった。

「僕は神楽木フォールディングスの御曹司であり、現在は系列会社で部長を務めております。」

「……は?」

父の眉がピクリと動く。

「神楽木……って、あの……?」

「はい。創業百年を超える老舗企業です。」

「お、おい待て。御曹司って、マジか……⁉」

お父さんが本当に飛び上がる勢いで椅子から立ち上がる。お茶がカタカタと揺れた。

律さんは続けた。

「日々多忙で、一般的な交際は非常に難しい状況にあります。しかし、それが理由で千尋さんとの関係を曖昧にはしたくありません。」
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