御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「こっち来て。」

律さんが、私の手を取ってリビングの大きな窓の前まで連れて行ってくれた。

「この景色、千尋に見せたかった。」

ガラスの向こうには、広がる都会の光。遠くに見える川のきらめき。

そのすべてを包み込むように、優しい夕日が差し込んでいた。

「……綺麗。」

「だろ?」

律さんは、まるで子供のような笑顔で私を見つめた。

私はその隣に立ち、新しい生活の始まりを心の奥で静かにかみしめた。

ここが、私たちの“新しい家”。

これから先、泣いたり笑ったり、いろんな日々が待っている。

だけど今はただ――

その温かい手に、しっかりと包まれていた。

そしてふと、私はあることに気づいた。

段ボールを減らして引っ越しを簡素にしたとはいえ、それでも何箱もある。

それなのに……このリビングは、まだ広すぎるくらいだった。

「なんか……落ち着かない。」

天井は高く、窓は大きくて。

開放感というより、どこか“空白”を感じる。
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