御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
その一言に、律さんは思わず笑った。

「頑固だな。」

「だって……律さんが私の作ったご飯を、美味しそうに食べてくれるの見るの、好きなんだもん。」

車内に、柔らかな空気が流れる。

窓の外を過ぎる街の明かりよりも、律さんの笑顔の方がずっと温かく感じた。

「……そっか。じゃあ、なるべく早く帰るよ。」

「ほんと?」

「うん。千尋のご飯、食べたいから。」

律さんのその言葉に、胸がきゅっとなった。

私はそっと微笑みながら、助手席の窓の外を見た。

その夜の光景は、何でもないようで、何よりも特別だった。

そして次の日。

寺川不動産の案件に没頭していた私は、ふと時計を見て息をのんだ。

「……あちゃー。なんで時間が経つの忘れるかな。」

気づけば、もう19時を回っていた。

その時、スマホが震える。律さんからのメッセージだった。

《あれ?今日って残業?》

――まずい。
律さんの方が先に帰ってる。
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