御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
《早く帰ってきて。千尋のご飯が、食べたいんだ。》

その一言に、なぜだか、涙が出そうになった。

私は急いで家に帰ると、カバンも放り投げてキッチンに突入した。

バッグの中からエプロンを取り出し、まな板の上に野菜を並べる。

切って、炒めて、煮込んで――もう、時間との勝負だった。

「千尋。」

そんな時に限って、背後からふわりと温もりがまとわりついた。

「やっぱり千尋の側にいるのが一番落ち着く。」

そう言って、律さんが私の肩に顔を埋める。

いつもだったら、「なに甘えてるの?」って笑いながら、ほっぺにチューでもしていた。

だけど今日は、違った。

「昨日……律さんに“仕事もしろ”って言われたって、言ったよね?」

トントントン……手元で刻む包丁の音に、自分の鼓動が重なる。

焦りと、悔しさと、律さんへの想いが、喉元までせり上がってくる。

「それなのに私が早く帰らないと、ってなると……」
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