八咫烏ファイル

【関東誠勇会・本部三階 組長室】
三階の組長室まで響いてくる銃声
坂上 誠は決心した顔でデスクの引き出しから
重厚な拳銃を取り出した

【関東誠勇会本部・二階】
坂上は組長室を出て二階へと降りる
廊下ではCTの部隊に組員たちが追い詰められていた
坂上は拳銃を構える
そして狙いを定める
パンッパンッパンッ!
乾いた三発の銃声
それは趙 剛と彼の部下二人の眉間を正確に撃ち抜いていた
三人の体は声もなく床に崩れ落ちる
「後ろのもん!付いてこい!」
坂上は叫んだ
彼は窓からCTが足場にしたワゴン車の屋根へと飛び降りる
そしてワゴン車から一階の地面へと降り立った
後に続く数名の幹部たち
坂上たちはビルの正面入り口から内部へと突入した
それはCTの襲撃部隊にとって全く予想していない背後からの奇襲だった
「なっ!?」
「後ろからだ!」
挟み撃ちにされたCTの兵隊たちに逃げ場はない
関東誠勇会の怒りの銃弾が嵐のように彼らを襲った
そして数分後
襲撃に来たCTの部隊は全滅した
事務所の中には敵と味方のおびただしい数の死体が転がっていた
四十か五十か。もう数も分からない
生き残った組員たちを前に坂上は血に濡れた顔で叫んだ
「全面戦争じゃあ!」
「徹底的にやるぞぉっ!」
「「「おおおおおーっ!!」」」
組員たちの雄叫びがビルを震わせた
【その頃 ― 横浜中華街・各地】
坂上の号令は絶対だった
関東誠勇会の反撃の狼煙は東京湾岸エリア一帯を焼き尽くす大火となった
【CT系クラブ『金龍』】
店のドアが蹴り破られる
獅子堂会の組員たちがドスを片手に雪崩れ込んできた
客の悲鳴。ホステスの絶叫。
組員の一人が店に飾られた金色の龍の置物を叩き割り叫んだ
「龍はこっちじゃあ!虎は死ねやあ!」
店は一瞬で地獄と化した
【秘密賭博場】
マシンガンを乱射しながら壁を破壊してヤクザたちが突入する
テーブルはひっくり返り麻雀牌が血の海に散らばった
金の入ったジュラルミンケースを奪いCTの支配人を捕らえ引きずっていく
「おい!金はどこだ!もっとあるだろうが!」
【貿易会社オフィス】
火炎瓶が次々と窓を突き破り投げ込まれる
CTの金の流れを管理していたオフィスは一瞬で紅蓮の炎に包まれた
逃げ惑う社員たちをヤクザたちは容赦なく殴りつけ情報を聞き出す
「ボスはどこだ!王 霸はどこにいやがる!」
それはもはや抗争ではない
一方的な殲滅戦だった
【金虎開発ビル・最上階】
巨大なデスクに足を上げ王 霸は葉巻をふかしていた
全ては計画通り
関東誠勇会は今頃壊滅しているはずだった
その時彼の電話が鳴る
部下の李 傑からだった
『王様!大変です!関東誠勇会が動きました!』
その切羽詰まった声に王は眉をひそめる
「なにぃ!?」
『CTのアジトや直系の店が今次々と襲撃に遭っています!』
「……あの老いぼれが……!」
王は忌々しげに吐き捨てた
「いいだろう!メンバーを集めて迎え撃て!」
「徹底的にやれ!」
王が電話を切ろうとしたその瞬間だった
ドゴォォォォォォンッ!
ビル全体が激しく揺れた
それは明らかにただの揺れではない
爆発音
「……まさか」
王は椅子から立ち上がると弾かれたようにエレベーターへと急いだ
彼の完璧だったはずの計画が今足元から崩れ始めていた
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