八咫烏ファイル
第十七章:エピローグ②

第十七章:エピローグ②


【あの事件から数ヶ月後】
【関東誠勇会・本部】
あれほど無残に破壊された関東誠勇会の本部ビルは
すでに綺麗に改装されていた
だが新しくなった壁や床は逆説的にあの夜の凄惨な記憶を蘇らせる
日向 観世の言葉通り
あの日逮捕された坂上をはじめとする関東誠勇会の組員全員は
数週間後「証拠不十分」として全員が釈放された
そして世界は大きく動いた
日本政府がアメリカをはじめとする西側諸国と連携し発表した数々の「証拠」
それにより中国政府がマフィアを使い日本及びアメリカへの転覆工作を行っていたことが白日の下に晒された
中国は世界中から強烈な経済制裁を受けることになった
【関東誠勇会・組長室】
坂上 誠は静かに窓の外を眺めていた
その時彼の私用のスマホが鳴る
ディスプレイには「番号通知不可」の文字
坂上は静かにその電話を取った
『……もしもし』
聞こえてきたのはあの静かでしかし全てを支配するような男の声
坂上「どちら様かな?」
日向『お名前の方は伏せさせてください』
日向『ですが先日関東誠勇会の組員の皆さんを釈放させた人間……』
日向『言わば今回のこの事件に限ってはあなたの「同志」であった人間です』
坂上は全てを悟った
坂上「……金虎開発ビルが燃えていたのは」
日向『私…いや我々がやりました』
坂上「なるほどな」
日向『一言お礼が言いたかったもので』
坂上「お礼?」
日向『ええ。日本国を救っていただいてありがとうございます』
そのあまりにも突拍子もない言葉
坂上は思わず笑った
坂上「面白いお方だ」
坂上「この反社会的勢力のわしにお礼とはな」
日向『ですが口先だけの政治家や平和ボケした一般人よりあなた方の方がよほど愛国心があります』
日向『まだ我が国も捨てたものではない……』
日向『本当にありがとうございました』
坂上「……もうダメかと思いましたがな」
坂上は静かに言った
坂上「我々の尊厳を守ってくれたのはあなたでしょう?」
坂上「こちらこそお礼が言いたい」
日向『いえいえ。これからもこの日本国をよろしくお願いいたします』
日向『それではまた』
電話が切れた
坂上は空の向こうにいるまだ見ぬ「同志」に思いを馳せる
「……長く極道をしてきたが面白いこともあるものだ…」
【宮内庁・祭祀調査室】
日向 観世が黒電話の受話器を静かに置いた
彼の目の前
千年物の神代杉で作られた文机の上には
一つの和綴じのファイルが置かれている
彼はそのファイルを手に取ると静かに閉じた
その美しい毛筆で書かれた表紙の文字
【二〇二五年〇月 八咫烏ファイル】
ファイルは閉じられた
一つの「仕事」が終わったのだ
観世は再び目を閉じ瞑想を始める
次なる有事がこの国を襲うその日まで
三本足の烏はただ静かに眠り続ける


おわり
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