最高の娘

第1章 母のにおい

母のにおいは、あたたかくて、ほんの少し鉄のような匂いがする。
私はその匂いが好きだった。きっと、誰よりも。

施設の先生たちは「お母さんのことはもう忘れたほうがいい」と言うけれど、私は忘れない。
母は私を、何よりも大切にしてくれた。誰よりも強く、深く、私のことを愛してくれた。

ニュースでは“異常者”とか“猟奇的”なんて言われていたけれど、違う。
母は、私を守るために、そうするしかなかったのだ。

だから私は、知っている。
母は最高だった。


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