靴に魔法をかけたのは
金曜日。自社制作のポップが届くと、晴佳はさっそく設置した。
エンド什器にラスト一点の靴を並べ、発泡スチロールの板でできた『シンデレラコーナー』の表示を天辺につける。
「期待したより安っぽいなあ」
シンデレラコーナーという名目は採用してもらえたものの、結局はポップを作ってセールコーナーの什器につけるだけという内容だった。
「ぜんぜんシンデレラっぽくないですね」
隣に来た芽瑠が言い、晴佳は頷く。
「どうせ本部の人は見に来ないから、勝手に棚作ろっかな……」
「在庫がはけたほうがいいんでしょうし」
そうだよね、と晴佳は頷く。売上を作るのは店長の義務であり責任でもある。
晴佳は入口正面の平台から新商品を移動させた。
平台に空箱を階段状に並べ、去年のクリスマスの展示で使った赤い布を絨毯のように敷いて空箱を隠す。
その上に売れ残っていた女性向けのシューズを、間隔をあけて並べた。ぜいたくに空間を使うと、それだけで高級感が増していく。そこへ薔薇の造花を飾り付けた。
天辺にはポリ塩化ビニルの透明なパンプスを置いた。クリア素材のソールが照明をきらりと反射して、ガラスの靴のようだ。夏の売れ残がちょうどいい飾りになってくれた。
「すごいオシャレになりましたね」
芽瑠にほめられ、晴佳は満足げに頷く。
「すぐに解体するの、もったいないくらい」
「ポップは下に置いたんですね」
「棚の雰囲気と合わなくなっちゃって。見づらいかな」
「大丈夫ですよ」
芽瑠の言葉に、晴佳はまた笑みを浮かべた。