「物語の最後に、君がいた」

プロローグ

何度目だろう、「死にたい」と思ったのは。

教室では、誰もわたしを見ない。
家では、母のヒステリーと父の無関心。

わたしは、誰にも必要とされていなかった。

それでも、ただひとつ。
本の中の世界だけは、わたしのことを拒まなかった。

ページをめくれば、誰かが泣いて、誰かが笑って、
わたしもそこにいるような気がした。

そして決めた。
死ぬなら、大好きだったあの本の舞台、福岡に行こう。

あの物語の中で何度も読んだ風景。
この目で見て、空気を吸って、
高校3年生の冬。最後に、物語の中のわたしとして、終わりたかった。
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