「物語の最後に、君がいた」

エピローグ

大学の図書館。
午後の光が差し込む窓際の席に、ふたり並んで座っている。

澪は、静かにページをめくっていた。
隣で、悠真がノートに何かを書き込んでいる。

春の光はやわらかくて、少し眠くなる。
けれど澪は、この“何でもない”時間がとても好きだった。

「あのね、悠真」
ふいに声をかけると、彼は顔を上げて笑う。

「ん?」

「今ね、ふと思ったの。
 “生きててよかった”って。……こんなふうに思える日が来るなんて、信じられなかったな」

悠真は何も言わず、そっと澪の手を握った。
その手のぬくもりは、変わらず澪を現実に繋いでくれる。

「俺は、ずっと信じてたよ。澪がここに来てくれるって」

「強いね、悠真は」

「ううん。澪に会って、俺も変われたんだ」

図書室の奥で、誰かが本を閉じる音がした。
澪はそっと本を閉じて、空を見た。

物語の最後に、君がいた。
でもきっと、これは“始まりの一章”なんだ。

まだ知らない未来が、きっとこの先に続いていく。

そのすべてに、君と一緒にいられますように。

< 20 / 20 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
【ジャンル】 恋愛 【キーワード】 ①内緒 ②約束 ③再会 ④記憶喪失 高校時代、ひとり静かに過ごしていた紬は、ある日、音楽室でひとりの少年・高瀬大翔と出会う。紬が書いていた小説ををきっかけに、ふたりは少しずつ心を通わせ、やがて恋人になる。けれど、噂や陰口、そしてある“事故”をきっかけに、ふたりの時間は突然止まってしまった──。 数年後、大学生になった紬と大翔は、偶然の再会を果たす。けれど、紬は彼との記憶をすべて失っていた。 「でも、不思議と安心する」 そう話す彼女と、忘れられても変わらず想いを抱き続けてきた大翔。すれ違いながらも再び距離を縮めていくふたりは、やがて“記憶をめぐる旅”へと歩き出す。 そして最後に訪れたのは、かつて別れと告白が重なった分かれ道── 「今も、愛してる」 その言葉とともに、紬の胸に、確かに眠っていた記憶が灯る。 ──これは、名前を忘れた恋の、その先を描く実話を混ぜた物語。
表紙を見る 表紙を閉じる
【ジャンル】 恋愛 【キーワード】 ①再会 ②約束 ③年の差 ④アオハル 火曜日が、ずっと嫌いだった。 図書委員の仕事で一緒になる、頭がよくてちょっと意地悪な一つ上の先輩が苦手で── でも、ある火曜日。ふと見えた彼のノートの中に、小説の一文を見つけた。 意外な共通点。静かな図書室で交わした、小さな約束。 「小説家になったら、駅前の本屋に並んだ私の本、全部買い占めてくださいね」 時が流れて、大人になった私は、本当に小説家になった。 もう連絡先も知らないあの先輩との、再会なんてないと思ってた。 ……だけど、発売日に訪れた駅前の本屋で、 私は、あの日と同じ声に出会った。 「──全部ください。昔の約束なんで」 10年越しの約束がつなぐ、静かであたたかな再会の実話を混ぜた物語。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop