「物語の最後に、君がいた」

エピローグ

大学の図書館。
午後の光が差し込む窓際の席に、ふたり並んで座っている。

澪は、静かにページをめくっていた。
隣で、悠真がノートに何かを書き込んでいる。

春の光はやわらかくて、少し眠くなる。
けれど澪は、この“何でもない”時間がとても好きだった。

「あのね、悠真」
ふいに声をかけると、彼は顔を上げて笑う。

「ん?」

「今ね、ふと思ったの。
 “生きててよかった”って。……こんなふうに思える日が来るなんて、信じられなかったな」

悠真は何も言わず、そっと澪の手を握った。
その手のぬくもりは、変わらず澪を現実に繋いでくれる。

「俺は、ずっと信じてたよ。澪がここに来てくれるって」

「強いね、悠真は」

「ううん。澪に会って、俺も変われたんだ」

図書室の奥で、誰かが本を閉じる音がした。
澪はそっと本を閉じて、空を見た。

物語の最後に、君がいた。
でもきっと、これは“始まりの一章”なんだ。

まだ知らない未来が、きっとこの先に続いていく。

そのすべてに、君と一緒にいられますように。

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