あの夏の夜の続きは今夜
彼はサンダルをつっかけて引き戸を開ける。と、外からムッとした熱気と潮の匂いが入り込んできた。

私もビーチサンダルに足を通して外に出る。

「あついね」とその背中に言うけれど返事はない。

昨日、坂崎くんと立っていた電灯のところで彼は振り向く。

「俺たちって次いつ会えるのかな」

少し恥ずかしそうに、でも表情には出さないように彼が小さな声で言った。

「遊びに来たら連絡してよ」

私が笑顔を作ってそう言うと、彼は無表情のまま咀嚼するように3回くらい頷いて「うん、分かった。じゃあね」と言った。

そのヨレヨレのTシャツの背中と、潮風と湿気と東から登った太陽と波の音と蝉の声と。

その光景が忘れられないまま私は大人になった。

浮島からの連絡は全くなかった。
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