あの夏の夜の続きは今夜
28歳の再会
ハンディファンが静かに壊れた。
駅のホーム。カバンから取り出して電源を入れてもびくともしない。
嘘でしょ。5,000円もしたんだけど。
昨晩充電したじゃん。
そんな私の状況なんてお構いなしに気温はどんどん高くなる。
まだ8時なのにこの暑さってことは14時の移動の時大丈夫なんだろうか。
今日は午後クライアントのところに行かないといけないから、夜のビアガーデンもしかしたら遅刻するかもなあ。
人で溢れかえるラッシュの時間帯のホームに電車が入り込む。私は後ろの人に押されるように、流されるようにして黄色の線まで近づく。
東京には慣れても満員電車には一切慣れない。
余裕のない人たち。
電車のドアが目の前で開いたのに、誰も降りることはなく、ほんのわずかな隙間に体を滑り込ませるしかない。
これを逃したらまた次来るまでの時間のロスを考えると乗らないわけにはいかなかった。
身動き取れないほどの乗客率に、私はとりあえずバッグを足元のぽっかり空いたスペースへと移動させる。体はつま先から頭まで固定されたように動かない。
目の前の人の体温も汗ばんだシャツの匂いもダイレクトに私に伝わってくる。
新宿までの辛抱だ。
そう思っていた時、わずかに下半身に違和感を感じた。