あの夏の夜の続きは今夜

10年後の夏の夜は

朝もらった名刺を見て電話をかけてみた。

5コールくらいしてやっと繋がる。

「もしもし」と少し大きい声。

「矢田です」
「あ、いとちゃん?」
「今飲み会終わりました!」
「今俺ね、二丁目いたよ。来る?」

浮島は二丁目のゲイバーにいた。
雑居ビルの一階。ネオンライト輝く派手な装飾と蛍光色に包まれた派手なママたち。ギャルよりも長いつけまつげと分厚いアイライン効果で本当の目の大きさが分からない。

私はすぐ浮島の隣に座らせられた。

「何飲む?」
「ウーロンハイで」
「ママ、ウーロンハイ」

ママは慣れたようにウーロンハイを作ってくれる。

「あれー、新しい彼女?」

目の前にウーロンハイが置かれて軽く乾杯をする。

「かわいいでしょ」
「すごい可愛いじゃない、彼女できたんだっけ」
「彼女じゃないんだよねー」
「じゃあなに、あんた達、どういう関係なの」

ママに聞かれて浮島は私をチラリと見る。目が合った。

「かわいいなあって昔ナンパした子」

そう言い切ってお酒を飲んでフッと笑う。

「昔っていうか今朝もナンパしたんだけど」

ママはその言葉を聞いて「またぁ?」と大声で言った。

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