あの夏の夜の続きは今夜
「あんた30歳になったんだっけ?」
「まだ28、今年29」
「あんたそんないい歳してナンパした子とゲイバー来てるの?趣味悪いわよ」

浮島は弾き返すようにハハッと乾いた笑いをして「可愛い子と酒飲むのは楽しいよ」と言う。

「そんなんだから結婚できないのよ」
「俺、結婚に興味ないから」
「寂しいよ、将来」
「一人が好きだから。たぶん平気」
「私と一緒に住む?」
「部屋狭くなんじゃん」

そこでママが奥のテーブルに呼ばれて「ごめんね、そのまんまどうぞご自由に、ご歓談を」とカウンターを出て行った。

「ごめんね、なんか引いた?」
「楽しそうだなあって見てた」
「好きなんだよね」
「浮島はゲイなの?」
「ゲイじゃないよ、ゲイからモテるけど」

カウンターに肘をついてグラスの中の氷を回しながら言う。

「いとちゃんが一番分かってるでしょ」

それに対して私は何も言わずにグラスに視線を落とした。

唇を見そうになって首筋に視線を逸らす。

きっと浮島は私を好きにはならない。

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