あの夏の夜の続きは今夜
「すみませーん」

突然私の耳に飛び込んできた声に目を開けると目の前にボスッと音を立てて水色と白のビーチボールが着水した。

声のする方を見る。

「すみません!当たってないですか」

声の主は同世代の男の人たちだった。
その中の一人が軽く泳ぎながらこちらへ向かってくる。

「大丈夫でしたか」

彼の声掛けに私は「ああ、はい」と軽く驚きながら手を伸ばしてビーチボールを取ろうとする。が、指先がかすめ、私の指先に押されたビーチボールは更に向こうへと漂っていく。
追いかけようとすると「あ、大丈夫です」と彼は私を抑えるようにしてヒョイヒョイと水を掻き分けボールに手を掛ける。

「ありがとうございました」

彼がそう言って笑った時、初めて彼の顔を見た。

眉毛が平行に伸びていて、それでいて程よく目尻で締まってる。シャープな骨格なのに笑うと可愛い目。

私は喉の奥が詰まるような、胸の上の方が苦しくなるような、耳の上が熱くなるような、そんな気がした。

ビーチボールを抱えた彼が私の目を見る。

「ってか可愛いですよね」

前触れもなく彼は口説いてきた。

「彼氏います?いますよね?可愛いですもんね?年齢当てます、21。21の大学生」

私の方を指差しながら言う。私が言い返す間もなく彼は話し続ける。

「え、なんで女二人で来てんの?大丈夫?彼氏心配しない?俺みたいなのが口説いちゃうよ」

思わず玲美の方を見ると、玲美はすぐ近くでこの男のことを睨んでいた。

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